『源氏物語』に語られ、ことばによって紡ぎ出された人間の営みは、どのような立場にあろうと時代に即して生きなずみながらも生きるほかはない、そう宿命づけられた魂と思索の軌跡を、いかなる時代においても変わることのない真理として、発信し続けてきました。そのような作品を読むということは、各自が、人生の真実を発見し続けていくことに他なりません。音読、現代語訳を施し、解釈を掘り下げ、一緒に作品の意義を考えていきます。（全１０回講座）

　「少女」巻に入ります。33歳の源氏は朝顔の前斎院を思い切れませんが、姫君の態
度は変わりません。祖母大宮（故葵の上の母）の元で養育された嫡男夕霧は12歳で元
服。親王の子に準じて四位でもよいところ、源氏があえて六位にとどめ大学に入学
させると大宮はその厳しさに不満ですが、二条の東院の曹司で刻苦精励、寮試に及
第、「才をもととしてこそ、大和魂の世に用ゐらるるかたも強うはべらめ」という負
託に応えます。同年、斎宮の女御が立后、源氏は太政大臣に。内大臣に昇進した右大
臣（昔の頭中将）は、娘弘徽殿の女御が斎宮の女御に超えられた敗北を恨み、次女雲
居の雁の東宮入内で勢力回復を期しますが、夕霧との相愛が発覚、清純な二人の仲
を引き裂きます。嘆く夕霧は、五節の舞姫に選ばれた惟光の娘の美しさに心を慰め
ます。翌春、朱雀院行幸があり夕霧は進士に合格、秋には侍従に任官。源氏がかねて
造営中の趣向の極みを尽くす六条院が翌々年の秋に完成、女君達が移り住みます。